板東 英二
徳 島 商 (徳 島) |
常にストレート1本真っ向勝負というその投げっぷりにマンモスが唸った。昭和33年夏の83奪三振は選手権の大会記録。準々決勝、魚津・村椿輝雄との延長18回、息詰まる投手戦は名勝負として語り草になっている。昭和31年夏にはじめて甲子園出場を果たしたときは、まだ1年生投手だった。1回戦で名門・平安(京都)と対戦、0対4で初戦敗退している。
引き分け規定の新設
昭和33年、徳島商・板東投手は春季四国大会・準決勝の高知商戦で延長16回、翌日決勝の高松商戦で延長25回を一人で投げたのがきっかけとなり、日本高野連は直後の夏の選手権大会から「延長戦は18回で打ち切り、勝負がつかない場合は引分再試合」とする大会規定を設けた。
▼昭和33年春季四国大会・決勝 =延長25回= (高松)石川陽造 (徳島)板東英二
高松商 000 000 000 000 000 000 000 000 2=2
徳島商 000 000 000 000 000 000 000 000 0=0
40回記念大会
昭和33年夏の選手権は、40回大会を記念して1県1校が参加。米軍統治下の沖縄からも首里高校が出場。例年の倍以上の計47校が参加したマンモス大会は、日程消化のため甲子園球場と西宮球場を併用した。徳島商は2回戦から登場、相手は秋田商。板東の豪速球が冴え渡り、いきなり17奪三振の1安打完封で3対0と勝利する。続く3回戦の八女(福岡)には15奪三振の4安打完投で3対1と勝利し、準々決勝で当時無名の初出場校・魚津(富山)との対戦を迎えた。
村椿輝雄との延長18回熱闘
試合は、豪速球の真っ向勝負という板東に対して、魚津のエース村椿輝雄は打たせてとるタイプという対照的な二人の投げ合いで始まった。1回の徳島商は、四球と盗塁で得たチャンスに左前打が出て二塁走者が先制のホームを突いたが、左翼からの返球を村椿がカットして本塁でタッチアウトにした。その後、両投手の好投が続き、試合は0対0のまま延長戦に入ったが、両校譲らずゼロ行進の末、"最終回"の18回を迎えた。徳島商は18回表、1死二三塁という絶好の勝ち越し機を作ったが、直後にスクイズが失敗して2死となる。さらに奇襲の重盗を試みたが、魚津の捕手から二塁への送球を遊撃手がカットして本塁に返球、間一髪三塁走者は憤死して無得点に終わる。このゲーム、徳島商の勝ちは無くなった。その裏、魚津・河田がフェンスを直撃する中越え長打を放ったが、たまたま中堅手の前にはね返り、素早く球が遊撃手を経由して三塁に転送、打者走者が憤死。結局、両軍ともに無得点。奇しくもこの夏から設けられた大会規定により延長18回で試合は打ち切り、0対0の引き分け。勝負は翌日の再試合に持ち越された。<※関連記事:(1)激闘・延長戦 / (2)名勝負&甲子園戦法>
▼昭和33年選手権大会・準々決勝 =延長18回・大会規定により引分= (徳島)板東英二 (魚津)村椿輝雄
徳島商 000 000 000 000 000 000=0
魚_津 000 000 000 000 000 000=0
甲子園史上最多の83奪三振
再試合では、板東は再び先発したが、魚津は村椿を控えに回して1年生の森内正親投手を先発させた。徳島商が4回に1点を先取したところで村椿が救援したが、徳島商は6回に2点を追加、終盤の魚津の猛攻を板東が1点に抑え込み、2日間に渡る死闘は決着した。板東は、最初の試合で延長18回参考記録ながら1試合最多の25奪三振、再試合でも9奪三振。大会通算の奪三振は66を数えていた。
▼昭和33年選手権大会・準々決勝 =再試合= (徳島)板東英二 (魚津)森内正親、村椿輝雄
徳島商 000 102 000=3
魚_津 000 000 100=1
翌日の準決勝、作新学院(栃木)戦にも板東は先発して1安打完投の14奪三振、4対1で勝ち決勝に進出。この時点ですでに大会通算の奪三振は80個に達していた。
▼昭和33年選手権大会・準決勝 (徳島)板東英二 (作新)大島
徳_島_商 | . | 001 000 003=4 | 作 新 学 院 | . | 001 000 000=1 |
さすがの板東も、決勝の柳井(山口)戦では疲労が目立ち打ち込まれて、わずか3奪三振の0対7で完敗、準優勝に終わったが、驚異の史上最多奪三振記録「83」は、現在でも球史に燦然と輝く不滅の大記録である。
甲子園での投手成績
大 会 | スコア | 対戦相手 | 備 考 |
昭和31年夏 | 1回戦 | ●00-4 | 平___安_ | 登板なし (山本○4失点完投) |
昭和33年夏 | 2回戦 | ◎03-0 | 秋_田_商 | 完封勝利(1):1安打17奪三振 |
| 3回戦 | ○03-1 | 八___女 | 完投勝利:4安打15奪三振 |
| 準々決勝 | △00-0 | 魚___津 | 完封(2):6安打25奪三振 (延長18回引分) |
| 〃 | ○03-1 | 魚___津 | 完投勝利:5安打9奪三振 (再試合) |
| 準決勝 | ○04-1 | 作 新 学 院 | 完投勝利:1安打14奪三振 |
| 決_勝 | ●00-7 | 柳___井 | 完投:14安打3奪三振 |
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昭和31年夏=1回戦 昭和33年夏=準優勝 (対魚津戦=1試合最多25奪三振) =延長18回参考記録= (大会最多83奪三振)
甲子園通算成績 4勝1敗1分 2完封
中日 77勝65敗 防御率 2.89
野球評論家 タレント |