田中 将大
駒大苫小牧 (北海道) |
57年ぶりの夏の選手権2連覇を達成し、甲子園の中心で雄叫びを上げた男が再び“同じ場所”へ帰ってきた。あの瞬間から1年間、全国が目標に掲げ続けた駒大苫小牧の中にあって、常にその話題の中心に田中将大がいた。マウンド上から鋭い眼光で相手打者を威圧し、打者を仕留めたときには気合いの雄叫び。北の怪物、世代最強投手と呼ばれ続ける中で自分を見失うことなく勝って勝って勝ち続け、チームは公式戦負け知らずで破竹の48連勝。 夏の選手権で積み上げた白星は3年越しの14連勝に到達。とうとう3度目の決勝戦の日を迎えていた。田中が目標にしてきた“同じ場所”とは甲子園の決勝マウンドだった。旧制中学の5年制時代に中京商(愛知)によって作られた夏の選手権3連覇の金字塔。1948(昭和23)年の学制改革以降、選手が毎年のように入れ替わる新制高校にとってこの大記録は遠い夢物語だった。その夢物語に73年ぶりに王手を掛けた北の王者の前に立ちはだかったのは、第1回大会から出場している出場回数27回目の伝統校だった。
堅守が引き寄せたミラクル逆転劇
駒大苫小牧の連覇を語るとき、このゲームを外して語ることはできない。1−6と5点差を追う7回ウラの猛攻はまさに王者の底力だった。林の2点適時二塁打など5本の長短打で6点を奪って逆転。松橋を3回途中から救援した田中が12奪三振の快投と持ち前の堅守で1点差を守り切った。勢いをつけたチームは続く大阪桐蔭(大阪)との準決勝も延長10回の接戦で制して2年連続の決勝進出を果した。投打に超高校級の辻内・平田をそろえる大阪桐蔭に対して序盤で5点をリード、先発田中が辻内に2ランを浴びるなど終盤に追いつかれるが、吉岡の好救援が勝利を呼び込んだ。
▼平成17年選手権大会・準々決勝 (鳴工)田中暁、八木一哲 (駒苫)松橋拓也、田中将大
鳴_門_工 201 000 300=6 駒大苫小牧 100 000 60X=7
深紅の大優勝旗が北の大地へ再び
平成17年選手権大会の決勝戦。「全員で優勝旗を返しに行く」を合言葉に、守りを徹底的に鍛え上げたチームは苦しい戦いを接戦で勝ち上がり、再び進出した決勝で京都外大西(京都)に5−3で競り勝った。駒大苫小牧は、1947−48年の小倉(福岡)以来となる57年ぶり、史上6校目の夏の選手権連覇を達成。北海道勢として初の全国制覇を果した前夏のメンバー6人が残り、林主将(3年)を中心にチームが結束。連覇の重圧をはねのけ、鳴門工(徳島)・大阪桐蔭(大阪)などの強豪を撃破。好救援で優勝投手となった2年生の田中を中心に1年ぶりのNo.1ポーズを決めると、5万人の大観衆が歓声と拍手で称えた。田中の9回は圧巻の三者連続三振。最後の打者寺本への最後の球(7球目)は外角高めの直球で、2年生投手では史上初の球速150キロだった。
▼平成17年選手権大会・決勝 (京西)北岡繁一、本田拓人 (駒苫)松橋拓也、田中将大 京都外大西 100 000 200=3 駒大苫小牧 100 011 20X=5 ※駒大苫小牧は2年連続2回目の優勝。
翌18年の選手権は本命視されていた選抜覇者・横浜(神奈川)が早々に姿を消し、その横浜を破った強豪・大阪桐蔭(大阪)も2回戦で敗れ去る中、駒大苫小牧は2回戦から登場。制球に苦しみながら14奪三振、3失点の田中が先発完投し、粘る南陽工(山口)を5−3で振り切ってまず初戦を突破。
王者の底力見せた逆転サヨナラ劇 迎えた3回戦の相手は好投手・野田を擁する青森山田(青森)。香田監督はこの試合に予選で1イニングしか投げていない岡田を先発させたが、裏目に出た。岡田が4点を失い、二番手菊地も2点を奪われ、3回途中から救援した田中も打たれて一時は6点のビハインドを背負う苦しい展開。6回、駒大苫小牧の打線が好投する野田を捕え反撃ののろしを上げると、8回に追いつき8−8同点。9回、田中が長短打を浴びて再び勝ち越しを許したが、そのウラ持ち前の粘りを発揮。中澤の同点ソロで9−9とし、2死から安打で出塁した田中を三谷が左中間二塁打で返しゲームセット。王者の底力を見せつける逆転サヨナラ劇で8強へ名乗り出た。
▼平成18年選手権大会・3回戦 (山田)野田雄大 (駒苫)岡田雅寛、菊地翔太、田中将大
青 森 山 田 | . | 042 100 011X=09 | 駒大苫小牧 | . | 010 102 132X=10 |
準々決勝でも地元兵庫の東洋大姫路に4点差をつけられ劣勢に立たされたが、6回に集中打で4点を奪い返し、7回に勝ち越すと、先発の田中が抑えて逃げ切り。準決勝の智弁和歌山戦は序盤から点の取り合いになったが、7−4で快勝。2回途中からの救援となったエース田中は得意のスライダーを織り交ぜて8イニングを10奪三振、4安打1失点。強打の智弁和歌山を寄せつけない好投で、ついに3連覇に王手。決勝の相手は斎藤を擁する早実。前年秋の神宮大会の初対決以来2度目となる対決は夏の決勝戦という最高の舞台で実現することになった。
斎藤(早実)との名勝負、3連覇成らず 平成18年選手権大会の決勝戦。3回途中から登板した田中は早稲田実(西東京)・斎藤佑樹と投げ合ったが1−1のまま延長15回で決着がつかず、あの松山商×三沢以来37年ぶり2度目となる決勝戦・引き分け再試合へ突入。翌日の再試合も二番手に回った田中は、2日間で20イニングの激投も実らず惜敗。田中には黒星が付かず、無敗のまま甲子園を去ることになった。わずか1点及ばず準優勝に終わった駒大苫小牧は、中京商(愛知)以来となる史上2校目の夏の選手権3連覇を惜しくも逃した。
▼平成18年選手権大会・決勝 (駒苫)菊地翔太、田中将大 (早実)斎藤佑樹 =延長15回・大会規定により引分=
駒大苫小牧 | . | 000 000 010 000 000=1 | 早 稲 田 実 | . | 000 000 010 000 000=1 |
▼平成18年選手権大会・決勝=再試合 (駒苫)菊地翔太、田中将大 (早実)斎藤佑樹駒大苫小牧 | . | 000 001 002=3 | 早 稲 田 実 | . | 110 001 10X=4 |
田中投手の甲子園成績 =12試合8勝0敗(完封0/完投3)
大
会 | 回戦 | 対戦相手 | 登板 | 勝
敗 | 投 球 回 | 投 球 数 | 安
打 | 奪 三 振 | 四 死 球 | 失
点 | 自 責 点 | スコア | 05 春 | 1 | 戸 畑 | 完投 | ◯ | 9 | 118 | 6 | 6 | 2 | 1 | 0 | ◯2−1 | 2 | 神戸国際大付 | 救援 | ― | 4 | 52 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | ●0−4 | 大 会 通 算 | 13 | 170 | 6 | 10 | 2 | 1 | 0 | (防) 0.00 | 05 夏 | 2 | 聖心ウルスラ | ― | (登板なし) | ◯5−0 | 3 | 日 本 航 空 | 先発 | ◯ | 7 2/3 | 129 | 9 | 12 | 3 | 1 | 1 | ◯13−1 | 準々 | 鳴 門 工 | 救援 | ◯ | 6 1/3 | 96 | 4 | 12 | 1 | 3 | 3 | ◯7−6 | 準決 | 大 阪 桐 蔭 | 先発 | ― | 7 1/3 | 117 | 6 | 9 | 3 | 5 | 4 | ◯6−5 | 決勝 | 京都外大西 | 救援 | ◯ | 4 1/3 | 70 | 4 | 5 | 2 | 2 | 0 | ◯5−3 | 大 会 通 算 | 25 2/3 | 412 | 23 | 38 | 9 | 11 | 8 | (防) 2.81 | 06 夏 | 2 | 南 陽 工 | 完投 | ◯ | 9 | 165 | 7 | 14 | 6 | 3 | 3 | ◯5−3 | 3 | 青 森 山 田 | 救援 | ◯ | 6 2/3 | 81 | 6 | 5 | 2 | 3 | 3 | ◯10−9 | 準々 | 東洋大姫路 | 完投 | ◯ | 9 | 134 | 9 | 11 | 4 | 4 | 3 | ◯5−4 | 準決 | 智弁和歌山 | 救援 | ◯ | 8 | 113 | 4 | 10 | 2 | 1 | 1 | ◯7−4 | 決勝 | 早 稲 田 実 | 救援 | ― | 12 2/3 | 165 | 7 | 10 | 3 | 1 | 0 | △1−1(引分) | 〃 | 早 稲 田 実 | 救援 | ― | 7 1/3 | 84 | 4 | 4 | 3 | 3 | 3 | ●3−4(再試合) | 大 会 通 算 | 52 2/3 | 742 | 37 | 54 | 20 | 15 | 13 | (防) 2.22 | 甲 子 園 通 算 | 91 1/3 | 1324 | 66 | 102 | 31 | 27 | 21 | (防) 2.07 |
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平成17年春=2回戦 平成17年夏=優 勝 平成18年夏=準優勝
甲子園通算成績 8勝0敗 (1分) 登板12試合 完投3 完封0 投球回数91 1/3 奪三振102 与四死球31 自責点21 防御率2.07
公式戦48連勝(駒大苫小牧) 選手権14連勝(駒大苫小牧)
東北楽天ゴールデンイーグルス ニューヨーク・ヤンキース(MLB)
日米プロ通算成績 (2014年終了時)
112勝40敗3セーブ
56完投
19完封
14無四球
1379奪三振
防御率2.34
最多勝:2回(日本)
最多奪三振:1回(日本)
最優秀防御率:2回(日本)
最高勝率:2回(日本)
最優秀選手(MVP):1回(日本)
24勝0敗(2013年)
新人王(2007年) |