吉田 正男
中 京 商 (愛 知) |
昭和6年、7年、8年と中京商を一人で夏の選手権3連覇に導いたのが「大車輪」吉田正男だ。3連覇は高校野球史上唯一の大記録であり、その後中京商は甲子園史上最強チームとして永く語り継がれていく。
最初の夏
6年夏、初戦で早稲田実(東京)との接戦を4対3で制すると、2回戦は秋田中に19対1で大勝、準々決勝は広陵中(広島)を5対3、準決勝は松山商(愛媛)の三森秀夫に3対1で投げ勝ち、決勝へ駒を進める。決勝は松山商出身の近藤兵太郎監督が率いる嘉義農林(台湾)を4対0完封、最初の夏を制した。
▼昭和6年選手権大会・準決勝 (松山)三森秀夫 (中京)吉田正男
松山商 000 010 000=1
中京商 001 000 20X=3
▼昭和6年選手権大会・決勝 (嘉義)呉明捷 (中京)吉田正男
嘉 義 農 林 000 000 000=0
中_京_商 002 200 00X=4 ※中京商は初優勝。
景浦将との名勝負
翌7年夏は2回戦から登場、高崎商(群馬)を5対0完封、準々決勝は長野商を7対2、準決勝は吉岡、吉田の継投で熊本工を4対0完封して決勝へ進出。決勝は、春を制してこれまた連覇を狙っていた松山商・景浦将との名勝負に甲子園が大いに沸いた。この試合、吉田はクレバーな投球術が冴え8回まで完封していたが、豪打の景浦には2本の3塁打を浴びている。3点リードで迎えた9回、松山商の猛反撃を食らい一気に同点に追いつかれるが、松山商のマウンドに立っていた景浦が打球を足に受けて降板するハプニングもあり、延長11回に中京商がサヨナラ勝ち、夏の連覇を達成した。
▼昭和7年選手権大会・準決勝 (熊本)岡本 (中京)、吉岡、吉田正男
熊本工 000 000 000=0
中京商 103 000 00X=4
▼昭和7年選手権大会・決勝 =延長11回= (松山)三森秀夫、景浦将 (中京)吉田正男
松山商 000 000 003 00X=3
中京商 110 001 000 01X=4 ※中京商は2年連続2回目の優勝。
延長25回、そして選手権3連覇
そして8年夏、初戦の善隣商(朝鮮)を11対0、2回戦の浪華商(大阪)を3対2、準々決勝は大正中(広島)の藤村富美男(阪神)と投げ合い2対0で勝利。
▼昭和8年選手権大会・準々決勝 (中京)吉田正男 (大正)藤村富美男
中京商 000 100 001=2
大正中 000 000 000=0
準決勝は8月19日、球史の頂点を極めた明石中(中田武雄投手)との延長25回、4時間55分の死闘である。吉田は25回を一人で投げ抜き、336球、80打数8安打、19奪三振で明石中を完封。この試合に登板回避した明石中の主砲・楠本保を9打席ノーヒットに封じ込んでいる。0対0の試合は25回裏、四球で走者が出ると2度の送りバントが安打、フィルダースチョイスとなった無死満塁から1番大野木のボテボテの二塁ゴロで中京商がサヨナラ勝ち。
▼昭和8年選手権大会・準決勝 =延長25回= (明石)中田武雄 (中京)吉田正男
明石中 000 000 000 000 000 000 000 000 0X=0
中京商 000 000 000 000 000 000 000 000 1X=1
翌日の決勝は、平安中(京都)を相手に吉田が1失点完投、初回の先制2点を守り切り2対1で勝ち、高校野球史上唯一の夏の選手権3連覇を達成した。
▼昭和8年選手権大会・決勝 (平安)高木正雄 (中京)吉田正男
平安中 000 010 000=1
中京商 200 000 00X=2 ※中京商は3年連続3回目の優勝。
驚異の甲子園最多23勝
吉田は、6〜8年の春選抜大会にも出場、準優勝とベスト4が2回。8年の春2回戦の興国商戦で延長13回22奪三振という記録も残している。3年間で春夏6季連続の甲子園出場、通算成績が23勝3敗というのは甲子園の最多勝であり、夏の14連勝(無敗)は驚異的な成績だ。まさに甲子園で勝つために生まれて来たような名投手だった。
大 会 | スコア | 対戦相手_ | 備 考 |
昭和6年春 | 2回戦 | ◎11-0_ | 川越中 | 完封勝利(1):2安打8奪三振 |
| 準々決勝 | ◎03-0 | 第一神港商 | 完封勝利(2):1安打10奪三振 |
| 準決勝 | ◎03-0 | 和歌山中 | 完封勝利(3):2安打6奪三振 |
| 決_勝 | ●00-2 | 広島商 | 完投:6安打5奪三振 |
昭和6年夏 | 1回戦 | ○04-3_ | 早稲田実 | 完投:7安打3奪三振 (逆転サヨナラ勝ち) |
| 2回戦 | ○19-1 | 秋田中 | 吉田-村上 |
| 準々決勝 | ◯05-3 | 広陵中 | 完投:7安打3奪三振 (逆転勝ち) |
| 準決勝 | ◯03-1 | 松山商 | 完投:4安打5奪三振 |
| 決_勝 | ◎04-0 | 嘉義農林 | 完封勝利(4):6安打9奪三振 (全国制覇:夏の初出場V) |
昭和7年春 | 1回戦 | ○03-1_ | 平安中 | 完投:3安打9奪三振 |
| 2回戦 | ○03-2 | 坂出商 | 完投:2安打8奪三振 (延長10回サヨナラ勝ち) |
| 準々決勝 | ◎08-0 | 長野商 | 完封勝利(5):3安打6奪三振 |
| 準決勝 | ●02-3 | 松山商 | 完投:8安打6奪三振 (延長10回) |
昭和7年夏 | 2回戦 | ◎05-0_ | 高崎商 | 完封勝利(6):1安打6奪三振 |
| 準々決勝 | ○07-2 | 長野商 | 完投:5安打6奪三振 |
| 準決勝 | ○04-0 | 熊本工 | 吉岡-吉田の継投で完封 (吉田初の救援勝利) |
| 決_勝 | ◯04-3 | 松山商 | 完投:6安打8奪三振 (延長11回サヨナラ:2連覇達成) |
昭和8年春 | 1回戦 | ◎03-0_ | 島田商 | 完封勝利(7):1安打8奪三振 |
| 2回戦 | ◎01-0 | 興國商 | 完封勝利(8):1安打22奪三振 (延長13回) |
| 準々決勝 | ○03-1 | 享栄商 | 完投:3安打10奪三振 |
| 準決勝 | ●00-1 | 明石中 | 完投:5安打7奪三振 (押し出し四球で決勝点) |
昭和8年夏 | 1回戦 | ◎11-0_ | 善隣商 | 完封勝利(9):【ノーヒットノーラン】14奪三振 |
| 2回戦 | ○03-2 | 浪華商 | 完投:7安打3奪三振 |
| 準々決勝 | ◎02-0 | 大正中 | 完封勝利(10):4安打7奪三振 |
| 準決勝 | ◎01-0 | 明石中 | 完封勝利(11):8安打19奪三振 (延長25回) |
| 決_勝 | ◯02-1 | 平安中 | 完投:2安打3奪三振 (3連覇達成) |
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昭和6年春=準優勝 昭和6年夏=優 勝 昭和7年春=ベスト4 昭和7年夏=優 勝 昭和8年春=ベスト4 (延長13回22奪三振=対興国商) 昭和8年夏=優 勝 (ノーヒットノーラン=対善隣商) (延長25回完封=対明石中) (19奪三振=対明石中)
甲子園通算成績 23勝3敗(甲子園最多勝) 11完封 選_抜09勝3敗(選抜最多勝) 選手権14勝0敗(選手権最多勝)
明大→藤倉電線 昭和13年=都市対抗野球優勝 昭和14年=都市対抗野球優勝 昭和14年=橋戸賞
平成4年に野球殿堂入り |