夏の全国高校野球、第51回選手権大会の決勝戦。鍛え抜かれた堅守で幾度ものピンチを切り抜けてきた両軍の激闘もついに9回を迎えました。文字どおりの“最終回”となるのでしょうか。甲子園球場に集結した5万5千の大観衆が固唾を呑んで見守る中、三沢高校の太田投手が、泥と汗にまみれて灰色になったユニフォーム姿で、今また通い慣れたマウンドに登って行きます。
[9回表]松山商
いきなり先頭打者の7番西本が中前安打(自身3安打、チーム6安打目)で出塁して大歓声に包まれています。9回表、松山商業は再びノーアウトの走者を出しました。《8番平岡には定石どおり送りバントのサインだ。》8番平岡は投前犠打、太田が一塁送球の間に一塁走者の西本は二塁に進んで、1死二塁。勝利を目指すこの伝統校が、長い均衡を破るべくプライドも何もかもかなぐり捨てて三沢・太田を揺さぶりにかかります。《一色監督は、この日2三振で当たっていない9番田中にも何とバントのサインだ。三塁に走者を置いてプレッシャーをかければ、相手バッテリーのミスを誘う可能性もある。与えられた条件下で得点に近づくために最善と思われる手を打っただけで、奇策でも何でもない。あとは1番キャプテン大森の勝負強さに期待するだけ。》9番田中はセーフティ気味にバントすると三塁方向に球が転がっていく。太田がすばやく処理して振り向きざま一塁送球。田中がヘッドから一塁にスライディング!判定は間一髪アウト!二塁走者の西本は三進して、2死三塁。この局面で、続く1番大森は初球にいきなり太田−小比類巻バッテリーの意表を突くセーフティバント!やられたか!?太田が猛然とダッシュして球を拾い上げた。すぐさま一塁に渾身の送球。西本は本塁を駆け抜けているが、これまた間一髪アウトだ!三沢高校、9回表の大ピンチを脱しました。松山商業の凄まじいバント攻撃、太田投手の気迫の守りの前に惜しくも実りませんでした。
[9回ウラ]三沢
ウラの守りは走者を出せばサヨナラ負けの危機を招くため、松山商業の方が精神的にはキツイはず。しかし、そんな心配をよそに井上の投球はますます冴え渡ります。5番菊池は右邪飛、6番高田は捕邪飛と、フェアグランドへの打球も許さない気合いのこもった投球。7番谷川はセーフティバントの奇襲に出ましたが、井上が難なく処理して一塁送球、3アウト!観衆のどよめきと溜め息‥‥。今年の選手権決勝は0−0で延長戦に入ります。
大変な激闘になってきました。9回まで戦って両軍得点なく決着せず、ついに延長戦に突入。
選手権決勝の延長戦となると第41回大会決勝の西条×宇都宮工戦以来10年ぶり。さらに0−0の延長戦は戦後の選手権決勝戦としては史上初。戦前を調べますと、実に半世紀をさかのぼる大正6年の第3回大会決勝、愛知一中×関西学院中戦以来の52年ぶりということになりました。 ※本文中の《青文字》はベンチの采配・作戦の狙いをシミュレーションしています。
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