[14回表]星稜
6番音は遊飛、7番山下は二ゴロ、8番石黒は投ゴロで三者凡退。星稜は6イニングぶりに走者が出塁しませんでした。
[14回ウラ]箕島
6番森川は堅田の外角球を上手く流し打って右前安打、サヨナラの走者が出て無死一塁。《打線は下位に回るが、サヨナラのチャンスを生かしたい。さすがの尾藤監督もココで送りバントを指示》7番久保のバントは一塁手加藤が処理、一塁ベースカバーの二塁手石黒へ転送されて、箕島がこの日初めて送りバントを成功させました。1死二塁にサヨナラの走者を置いたこの場面、箕島側から見た「攻撃編」と星稜側から見た「守備編」の二元解説でご覧ください。
[14回ウラ]1死二塁からの場面(箕島・攻撃編)
8番浦野がファウルボールで粘ってカウント2−3まで来ました。《サインはヒットエンドラン》浦野を歩かせてしまうと嶋田まで打順が回ってしまう。次の球は絶対にストライクを投げてくるから、内野の間を抜けばこのゲームは決着する。いざ勝負‥‥と思っていた矢先、堅田が振り向きざま二塁へ牽制。しまった!二塁走者森川の離塁の大きさから見て、浦野も箕島ベンチの誰もが「挟まれる」と思った瞬間、森川が三塁に向かってスタート!ディレードスチールだ。牽制球を受けた遊撃手北が三塁へ送球、森川は猛然とヘッドスライディング!砂ホコリが舞う。三塁手若狭はタッチできない「セーフ」。命拾いをした箕島ベンチは大盛り上がりだ。森川は真っ黒になったユニフォームの土を払い落としている(ここでタイムを取るべきだった)。
1死三塁に変わって星稜の間合いが長い。堅田はまだセットポジションにも入っていない。サヨナラのピンチに追い詰められて動揺しているのか?「3バントスクイズがあるかもしれない」‥‥森川は今一度、監督のサインを覗き込む。一歩二歩ベースを離れた次の瞬間、森川は背中に衝撃を感じた。三塁塁審の達摩の右手の“グー”がまっすぐ高く上がって「アウト!」の判定。「あーっ‥‥」森川は呆然と立ち尽くしたまま。三塁手若狭がボールを持っていた。隠し球である。絶好のサヨナラ機を逃した箕島、浦野も遊ゴロに倒れ、結局は三者凡退。
[14回ウラ]1死二塁からの場面(星稜・守備編)
1死二塁、浦野のカウント2−3で堅田がセットポジションに入る。リードする二塁走者が死角に入る瞬間、捕手川井から牽制球のサイン。振り向きざま二塁へ送球、「よし!」離塁が大きい森川を上手く挟んだと思ったが、森川はそのまま三塁へスチール敢行。余裕で刺せるタイミングだが、遊撃手にとって右に素早く半回転しながらの三塁送球は難しい。案の定、北の送球が本塁方向に逸れてセーフ。命拾いをして沸き上がる箕島ベンチを尻目に、三塁手若狭がマウンドの堅田に駆け寄る。声を掛けながらボールを投手のグラブにボールを渡して、三塁の守備位置へ戻る‥‥これが普通の動き。ところが、若狭は堅田にボールを渡さず平然と戻っていった。「アレをやるのか」このとき隠し球をやっていることは星稜のほかの選手は誰も気づいていない。ましてや、盛り上がっていた箕島ベンチも、三塁ベース上でユニフォームの土を払っていた森川も、完全にボールから目を離しているから「三塁手がボールを持ったまま戻ってきた」とは夢にも思っていない。まさに隠し球はこういうときにやりなさい、というマニュアル通りの状況を箕島側が作ってしまった。
「いける」‥‥若狭は“そのとき”を虎視眈々と待った。一方の堅田はドキドキしながら遊撃手北に声をかけている。次に二塁手石黒にも声をかけた。ボールは持っていないから、プレートを踏む訳にはいかない(踏んだら最後、ボークでサヨナラ負けである)。悟られまいと普通を装っているが、投球動作に入れない堅田の動きは何ともぎこちない。つい長い間合いになってしまった。気づかれたかなと思ったそのときだ。三塁走者森川がベースから離れた。「今だ!」若狭が森川の背中にタッチして三塁塁審にアピール、アウトが宣告された。「してやったり」と得意満面の若狭に対して、汗を拭いながら大きく溜息をつく堅田。打者浦野への次の一球を投げる前に、状況は1死二塁→1死三塁→2死走者なしと目まぐるしく変化していた。
ディレードスチールに隠し球、奇襲の応酬。目が離せない死闘になってきました。14回が終了して2−2同点。いまだ終わらず‥‥。
※本文中の《青文字》はベンチの采配・作戦の狙いをシミュレーションしています。
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